小児歯科という分野がなぜ通常の歯科と分けられているかというと、大人への治療と子供への治療とを同列で考えることができないからです。ご自身が子供だったころのことをよく思い出してください。歯医者と注射がどれだけ恐ろしい医療行為だったかということを思い出されるのではないでしょうか。子供の虫歯治療において、どれだけその精神的負担を軽減するかという点で、小児歯科は非常に重要な意味を持っているのです。
また、乳歯はどうせ抜けてしまうのだから、虫歯になったとしても治療は大して重要ではないと考える人もいますが、それは大きな間違いです。虫が食ってしまえば、程度の違いこそあれ、大人、子供にかかわらず、苦痛をともないます。苦痛を取り除くことが、医療行為の意義です。ただし、大人と同じように治療すれば、子供に大きなストレスを与えてしまいます。これは、子供にとっても我々医師にとってもプラスはありません。
虫歯治療の場合、基本的には子供の治療も大人の治療も同じことをしなければなりません。しかし、これはあくまでも技術的な部分であり、恐怖感やストレスがはるかに大きくなる子供の治療は、それだけ神経を注がなければならないのは当然のことです。
虫歯治療で歯を削った経験がある人ならば、一度は麻酔をした経験があると思います。大人である私たちからすれば、「麻酔のための皮膚麻酔」によって、それほど大きな痛みを感じることはないと理解できるはずです。しかし、子供からすると、痛みそのものよりも、「注射をされる」という恐怖心があまりにも大きくなりすぎてしまいます。
そんなときに有効なのが、「電動麻酔器」です。電動麻酔器とは、少なくとも見た目が注射器のようには見えないという点で、「注射は痛い、怖い」という先入観を取り払うことができます。
もちろん、それでもどうしても泣き叫んでしまうお子さんもいますが、もしそうなってしまったら、当院では時間を改めてもう一度チャレンジするという方法を採用しています。
また、麻酔に限らず、「歯科医院」や「歯科医」自体に条件反射的な恐怖を抱いてしまうお子さんの治療は、場合によっては全身麻酔を施して実施する場合もあります。歯科医院が悪の巣窟であり、歯科医やスタッフは全員敵であるとみなしてしまうお子さんも多いです。そういった場合、説得でどうにもならなければ、全身麻酔を採用することもあるのです。
このように、小さいお子さんの歯科治療は、精神的負担をできるだけ軽減するためにいろいろと工夫を凝らして行っています。
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